あげくの果てのyou,your,yours.

推しとすきをめぐる感情について。

stay beautiful.─Travis Japan『ENTER1234567』のこと─

去年の夏、美しい星に墜落した。

とてもやさしいその場所は居心地がよく、つい住みついてしまい、もう1年が経過しようとしている。

新住民なのでたいしたことはきっとなにも言えないけれど『ENTER1234567』については書きたい。 感情が巨大すぎていつか暴発してしまうまえに。

美しい星、とは、ジャニーズJr.のTravisJapanのことである。
そして『ENTER1234567』は9.26と9.27に開催された彼らの単独オンラインコンサート。
延期の末、9月に開催予定だった公演についての結果はわからずじまいだけれど、もともと予定されていた春の公演には参戦できるはずだった。もちろん生で観られたらいちばんよかった。でもそれは望めない世の中で、彼らが作り、見せようとしてくれたものを観る機会があったことはとても感謝している。

ちょうど一か月前に、関東のジャニーズJr.が集った無料配信ライブがあった。
今回まず度肝を抜かれたのは、そこからたった一か月のあいだにトラジャがさらに進化を遂げていたことだ。

インターネットに関しては何周も遅れていたジャニーズが、ネット配信をはじめてくれたことで、本来ならすさまじいチケット争奪戦が繰り広げられ、観られない可能性が高い彼らのコンサートを何度も観る機会にめぐまれた。
この単独配信に至るまでに、今年はチャリティのための「Happy Live With You」やソロコンサートだった「Summer Paradise」、そして先の無料配信があり、トラジャのパフォーマンスはそのたびに進化し、強くなっていつも眼前に現れた。
まだ情報局のダイジェスト動画があったころ、そこにあったすべての動画を順番に観て、トラジャの表現の幅の広さに魅力を感じたことが、彼らをすきになるきっかけのひとつだったのだけれど、幅はさらに広くなったように感じる。多面体のように、いろいろな曲でいろいろな顔ができる彼らのあたらしい顔を、幾度も見せてもらった。

彼らの進化を見たい、未来を見たい、という願いそのままに、ものすごいスピードで変体していくさまは、気を抜くと置いていかれそうだとすら思うくらいに。

誤解を恐れずに言えば、舞台や先輩のバックで目にしていたころ、トラジャはダンスは抜群にうまかったけれど、Jr.の中でも控えめでおとなしいグループのように感じていた。もちろんメンバーが変遷しているというデリケートなところも影響しているのかもしれないけれど、それについて言及することはわたしにはできない。
だけど、今、ついに到達したJr.の最前線に立つトラジャがめちゃめちゃ強いことだけはわかる。去年のサマパラだって、オースティンのライブに出たときだって、虎者だって進化しつづけていたはずだけれど、その比ではない気がする。
YouTubeでのキュートでピースフルな、そしてたまに「幼稚園」と称されるような戯れを眺めているとつい忘れがちだけれど、そういえば彼らは虎だった。
ときに牙をむいて、しなやかに地を駆ける美しい獣でもある彼らは、強くて当然だったのだと思わされた。

 

ただ、ずっと強かったわけではないと思う。


2020年、世界は変わってしまった。これまであたりまえだったことはあたりまえでなくなり、あたらしい空気と習慣がわたしたちの日常を覆っている。
ジャニーズも例外ではなく、一時期すべての現場が消えた。
アイドルとオタクの世界は特殊な世界で、ある意味「依存の悪循環」の図のような側面もあって、狂い続けることで前進している感がある、とわたしは思う。というか、どこか狂っていないと、おたがいこんなこと長く続けられないのではないか、という気がする。
あたりまえのようにあった現場が消え始めた当初、1年にたった数時間しかなかったとしても、それがいかに日々の仕事や日常のモチベーションになりえていたのかを知ったし、オンライン配信がはじまったころも、ありがたいとは思いつつ、ひとが直接放つ感情や熱のうねりがもたらすあの空気が恋しかった。なのに数か月経つと、この状況に慣れてしまい「意外に現場がなくても生きていけるな、オタクやめれるかもしれない」と頭の隅をかすめたこともあった。
アイドルだって、絶え間なく続いてきたコンサートや舞台の場と、歓声の波が消えた世界で、魔法が解けるようにふっと冷えてしまった瞬間があるんじゃないだろうか、アイドルであった自分を保てなくなる瞬間があったのではないかと想像し、とくに彼らはデビュー組と違って、CDをリリースしたり、TVのレギュラー番組があるわけではないので、仕事が一切なくなってしまった期間にものすごく葛藤したのではないかと感じていた。
それでも、トラジャはそれを超えて、強くなって、笑って、アイドルとして前に進んでくれている。ずっとすばらしかった。ちがいないけれど、そのままに、それ以上にすばらしくなって。
電飾で飾られただけの無観客の会場でも、まるでそこに観客がいるかのような、エモーショナルとバイタリティに満ちたパフォーマンスだった(いればもっとすごかったんだろうけど。でもそれもまたこわい)。

すきだったところをあげればきりがないけれど、このコンサートの中で、忘れられないほどの幸福がからだを駆け巡った瞬間がある。
元太くんと一緒に披露した、松倉くんのソロ「The Red Light」のしびれるような空間と空気を切り裂くように、松倉くんがじぶんで「Happy Groovy」のカッティングギターのイントロを弾いた、その瞬間。もともとわたしがトラジャのオリジナル曲の中で「Happy Groovy」がいちばんすきなのもあるけれど、この緩急!

一日目は通信障害があってこの場面を完全なかたちで観ることができなかったので、オーラスしかわからないけれど、ギターを弾く松倉くんを「Today、ギターうちの子や~~!!(そう聴こえた。違っていたらすみません)」とメンバーが笑顔で囲みながら「Happy Groovy」を披露するという光景から伝染した多幸感は、次の曲「ROCK YOU」のメロディに乗って最高のかたちで昇華され、わたしはしあわせすぎて、部屋でひとり、引くほど泣いていた。まじで宇宙 is youだった。すきが爆発しすぎてもう宇宙だった。銀河一すき、って思った。それ以外の言葉で処理できなかった。完全に感情が言葉を超えていた。

わたしにとって、あの瞬間はもう現場だとかオンラインだとかそんな境界は消失していたんじゃないかと思う。

その感情をけしてそのまま着地させてくれず、「Suger」「Face Down」と嵐メドレーでたたみかけてくるのがまた憎いねトラジャ…

 

このコンサートのおわりに彼らは「今度は僕らがみんなを支える、しあわせにする」とか「みんなにたのしく、元気になってもらいたいけど、その気持ちを作ることはむずかしい。でもそんな気持ちになってくれたら、と思ってこのコンサートを作った(意訳)」と語っていた。そんな気を張らなくてもいいんだよ、と伝えたくなる(あと、なんならもう完全完璧天才なまでに作れてました、ってことも)。
もはや、推しが健やかに無事生きてくれていることを、毎日切実に祈るほどシビアになってしまった時代で、しあわせに、たのしく、元気にいるのは今まで以上におたがいさまなんじゃないかと思う。だからこそ、ほんとうに、拍手や歓声をダイレクトに送れたらいいのに…というもどかしさはどうしても感じるし、インスタに感想を送ることはできるけれど、すぐにその場で直接伝えられたらよかったのに、という切なさはたしかにある。

それでも、TravisJapanのみんながたのしんでいたらオタクはたのしくなるし、元気でいてくれているのならそれだけでありがたいのだから、そのままトラジャらしく進んでくれたらうれしい。最高にすてきなコンサートだった。ほんとうに。

 

よく如恵留くんが、世界をやさしくするためにアイドルをしているとか、誰も取り残さないって言う。トラジャが持つ愛とやさしさ、そして肯定と個の尊重に満ちたグループの空気は、きっと遠くないいつか、もっと多くのひとに必要とされる時代がくるとわたしは信じている。

詩を歌声で綴るごとに、涙と胸の叫びが7人のあいだに伝播していくような「宇宙に行ったライオン」を聴きながら、彼らの駆ける果てがしあわせであることを願わずにはいられなかったし、彼らのことをこんなにすきになれてうれしい、と思った。

あなたたちのことをこんなにすきになれて、ただただうれしい。

こんなふうにただ純粋な、にごりもよどみもない、澄んだ気持ちをプレゼントしてくれるなんて、わたしの落ちた星はやっぱりとても美しい。